2時50分でいいですか?

 

ある映画館でのこと。

 

 

私は映画を観るまでの時間を

その映画館内の二階で、珈琲を飲むのが好きで

いつものように珈琲を飲んでいました。

 

 

すると

初めて映画館に来たのか、高齢の女性が、

タイトルの、「ボンジュール アンをください」

と、言いました。

 

 

 

時間は午後2時を、少しすぎた頃。

 

 

 

受け付けの若い女性スタッフは、

顔色ひとつ変えず

「2時50分でいいですか?」

と、聞いた。

 

 

 

この高齢の女性が、

まさか、18時20分で観るわけないだろうが。

当然、14時50分、つまり、2時50分の映画を観に来たとわかってるではないか。

 

 

 

と、横で聞いていた私は思ったが、

案の定、

高齢の女性は立ったまま、キョトンとしている。

 

 

 

すると、再度

その若い女性スタッフは、

「2時50分でいいですか」と聞いた。

 

 

高齢の女性は意を決したように、

「はい、2時50分でいいで…」

と、答えた。

 

 

なんか、悲しかった。

私の母くらいの年齢の女性が、

この映画を観に来るには、勇気がいったのではないか。

 

と、なんか悲しかった。

 

 

ここにも、またひとり、

 

 

思いやりのない人間がいた。